植木フルート&クラシックギター教室の日記

植木フルート&クラシックギター教室は新潟市中央区の閑静な住宅街に佇む音楽教室です。このブログではフルートやクラシックギターを新しく始めたい、あるいはすでにやっている方向けの情報や当教室の講師の日常の一場面を綴っていきます。よろしくお願いします。

カラマーゾフの兄弟のギター

 ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」はとても長くて読みごたえのある小説です。特に私が読んだのは古い翻訳でしたので余計にそう感じたのかもしれません。

 この長い小説の中で「ギター」が2度登場します。

 一つ目はカラマーゾフの家の4男なのに正式な兄弟と認められず、使用人として生活するスメルジャコフが弾き語りをするシーンです。ギターを弾きながら女性の前で歌う場面ですが、どのようなギターであるかについての描写はありません。どのような姿勢で演奏していたかもわかりませんが、後でベンチにギターが置かれることから、ベンチに座りながら弾いていたようです。

 もう一つの場面は物語の重要な女性登場人物の1人であるグルーシェンカの没落した元恋人が弾き語りをしたという記述です。グルーシェンカに昔を思い出させようとして弾き語りしたようです。このシーンにもギターの種類を特定できるような描写はありません。

 1つ目のスメルジャコフはフランスに憧れている設定の人物なのでラコートなどフランスの19世紀ギターを弾いていたら面白いと思いました。

 しかしふとロシアン・ギターというギターがあることを思い出し、少し調べてみました。ロシアン・ギターは7弦ギターで19世紀後半においてロシアでは6弦の19世紀ギターやトーレス式のスパニッシュ・ギターと比べてはるかに人気があったようです。そのことからスメルジャコフが使用したギターは7弦のロシアン・ギターと考えるのが自然かもしれません。

 上記の2つの「ギター」登場場面からわかることはギターが女性を口説く(?)道具として使われていることと、独奏ではなく歌の伴奏として使われていることです。使用人であるスメルジャコフや没落した元恋人が弾いていることからなんとなく社会的身分の低い人が使う楽器みたいな印象もありますが、当時のロシアではギターはどのような楽器と捉えられていたのでしょうか。

 ちなみに19世紀後半に大人気だった7弦のロシアン・ギターもスペインの巨匠アンドレス・セゴビアが1926年にツアーでロシアに訪れたことをきっかけに徐々に6弦ギターにスイッチされていったようです。

 

植木