シューベルトはよく知られた作曲家ですが、マティーカは知る人ぞ知る作曲家です。
その知る人の多くはクラシックギター愛好家です。
ヴェンツェル・トーマス・マティーカ1773-1830)はボヘミア生まれの作曲家でウィーンで活動しました。
シューベルトより27年早く生まれていますが、亡くなった年に関してはシューベルトは1828年で、マティーカは1830年なので2年しか違いません。
シューベルトはマティーカのノットゥルノOp,21(フルート、ヴィオラ、ギターの為の作品)にチェロのパートを足して編曲しています。
このことは2人が面識あったのではと想像させます。
教室主催の10月5日のコンサートではマティーカの6つのソナタOp.31から2つの短調のソナタを演奏します。ギターの独奏曲です。私は6つのソナタの中では何故か短調で書かれた3曲を特に気に入っています。
マティーカのソナタにはアメリカに留学していた時の思い出があります。もう5年以上前のことですが、当時私が師事していたデビッド・スタロビン先生が全曲マティーカのリサイタルをしました。曲目はソナタ3曲、それから変奏曲とメヌエットが1曲ずつだったと思います。
ママロネックというニューヨーク州ウェストチェスター郡の町でのサロンコンサートでした。
マンハッタンのグランドセントラル駅からノースメトロ鉄道に乗ってママロネック駅まで行き、そこからタクシーで会場まで行きました。
その会場はコンサートホールというより大きな別荘のような雰囲気でした。1階がコンサートをするスペースで2階にはたしか美術品が展示されていました。
とてもアットホームな雰囲気で、それでいて何となく気品を感じさせる場所でした。
そこで聴いたマティーカはとても素晴らしかったです。楽器はハウザー1世のウインナーモデルを使用していました。アメリカにいた時に先生のリサイタルには何度か足を運んだのですが、毎回演奏を聴いた後しばらく自分のギター演奏が上達したような感じがしました。そのような不思議な影響力のある演奏でした。
ママロネックのコンサートでは途中休憩の時間が印象的でした。お客さんの多くは2階のギャラリーを見学していたのですが、先生もまたそこでお客さんと談笑していました。さっきまで演奏してた人が、まだ後半もあるのにお客さんと休憩の間何やら盛り上がっているのは不思議でしたが、それはその場所にふさわしい行為であるように感じました。
そのコンサートは留学中に聴いた最高のコンサートの一つでした。いつの日かか自分もそういう演奏をできるようになりたいと思いました。
今回10月5日に演奏するマティーカのソナタはその時に先生が演奏した曲です。ママロネックで聴いたコンサートのような演奏を目指して頑張ります。